もしもの災害後、自宅に戻る判断と注意点
はじめに
大きな災害が起きたとき、家族みんなで避難所に避難したり、親戚の家に身を寄せたりすることがあるかもしれません。安全な場所に避難した後、いつ、どのように自宅に戻れば良いのか、不安に思う方もいらっしゃるでしょう。
自宅に戻ることは、普段の生活を取り戻すための一歩ですが、焦ってはいけません。安全が確認されていない場所に無理に戻ると、思わぬ事故や危険に遭う二次災害(にじさいがい:最初の災害の後で起こる別の災害や被害)に巻き込まれる可能性があります。
このページでは、もしもの災害後、自宅に安全に戻るための判断の仕方や、戻る前に確認すべきこと、自宅に戻った後の注意点について、家族みんなで確認できるよう分かりやすく説明します。
自宅に戻るタイミングと判断
自宅に戻るかどうかは、家族の安全を守るためにとても大切な判断です。以下の点を参考に、慎重に決めましょう。
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自治体からの情報を待ちましょう
- 災害が発生した後、まずは住んでいる場所の市役所や区役所(自治体)からの情報に注意してください。
- 避難情報(避難指示など)が解除されたかどうかを確認することが最も重要です。避難が解除されていない場合は、まだ危険な状態かもしれません。
- 自治体は、地域の安全状況、道路の状況、ライフライン(らいふらいん:電気、ガス、水道など、生活に必要なもの)の状況など、大切な情報を発信します。テレビ、ラジオ、インターネット、自治体のウェブサイトなどで情報を集めましょう。
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自宅や地域の状況を確認しましょう
- 自宅や自宅の周りの建物が壊れていないか、道路が通れるか、浸水していないかなどを確認します。
- ニュースや自治体の情報で、住んでいる地域の被害状況を知ることができます。可能であれば、近所の人と連絡を取り合って情報交換することも有効です。
- ただし、危険な場所に近づいてはいけません。安全な場所から確認してください。
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家族みんなで話し合いましょう
- 自宅に戻るかどうか、いつ戻るか、どのように戻るかは、家族みんなで話し合って決めましょう。
- 特に、子供や高齢者の体調、気持ちに寄り添い、無理のない計画を立ててください。
- 「自宅に戻る前に確認することリスト」などを一緒に見て、不安な点がないか確認するのも良い方法です。
自宅に戻る前に確認することリスト
自宅に戻ることを決めたら、出発する前に以下の点を必ず確認してください。
- 自治体からの安全情報:
- 避難情報が解除されましたか?
- 自宅周辺に危険情報(建物の倒壊リスク、土砂崩れのリスクなど)は出ていませんか?
- 交通状況:
- 自宅までの道路は通れますか?
- 公共交通機関(電車、バスなど)は動いていますか?
- 自宅の状況:
- 自宅の建物に大きな被害はありませんか?(遠くから確認できる範囲で)
- 自宅周辺に危険なもの(壊れた塀、電線、ガス管、看板など)はありませんか?
- ライフラインの状況:
- 自宅のある地域で、電気、ガス、水道は使えますか?(自治体やライフライン会社の情報で確認)
- 家族の安全と健康:
- 家族みんな、体に怪我はありませんか?
- 疲れていませんか?体調が悪くないですか?
これらの点がクリアになってから、自宅に戻る準備を始めましょう。もし不安な点がある場合は、無理せず避難先にもうしばらく留まることも考えてください。
自宅に戻る際の注意点
自宅へ向かうとき、特に注意したい点です。
- 複数人で行動しましょう: できるだけ家族や知り合いと一緒に行動してください。一人よりも複数人のほうが、安全を確認しやすく、もしもの時も助け合えます。
- 明るい時間帯に移動しましょう: 夜間は危険な場所が見えにくく、二次災害のリスクが高まります。できるだけ昼間の明るい時間に移動してください。
- 足元や頭上に注意しましょう: 道路には瓦礫(がれき)やガラスの破片が落ちているかもしれません。また、建物の一部や看板が落ちてくる危険もあります。足元をよく見て、頭上にも注意しながら歩きましょう。
- 危険な場所には近づかない: 壊れかかった建物、浸水している場所、電線が垂れ下がっている場所など、明らかに危険な場所には絶対に近づいてはいけません。遠回りしてでも安全な道を選んでください。
- 自宅に入る前に外から安全確認: 自宅に着いたら、すぐに中に入らず、まず家の外から全体の様子を見てください。建物が傾いていないか、外壁に大きなひび割れがないかなどを確認します。
自宅に戻った後の注意点
家に無事に戻れたとしても、まだ安心はできません。家の中にも危険が隠れていることがあります。
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家の中の安全確認:
- ドアや窓を開けるときは、急に開けず、ゆっくりと開けてください。
- 家に入ったら、まずガス漏れの匂いがしないか確認します。もしガスの匂いがしたら、火を使わず、窓を開けて換気し、すぐに契約しているガス会社や自治体に連絡してください。
- 家具が倒れていないか、落ちてきたものがないか確認します。棚の上のものなどが落ちているかもしれません。
- ガラスの破片が床に散らばっていることがあります。厚手の靴やスリッパを履いて、足元に十分注意して歩きましょう。
- 建物の柱や壁に大きな損傷がないか確認します。もし不安な場合は、専門家に見てもらうことを検討してください。
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ライフラインの確認と復旧:
- 電気: ブレーカーが落ちているかもしれません。ブレーカーを上げる前に、濡れている場所がないか、電気製品が壊れていないか確認します。もし漏電(ろうでん:電気がもれること)の危険がある場合は、専門家に見てもらいましょう。
- ガス: ガス漏れがないか確認した後、契約しているガス会社の指示に従って、安全に使えるか確認します。大きな地震の後などは、安全装置が働いてガスが止まっていることがあります。復旧方法を確認してください。
- 水道: 蛇口をひねって水が出るか確認します。もし水が出ても、そのまま飲めるかどうかは自治体の情報で確認してください。断水(だんすい:水道が止まること)している場合は、給水情報(きゅうすいじょうほう:どこで水をもらえるかの情報)を確認しましょう。
- ライフラインの復旧には時間がかかることがあります。それまでの間、非常用の備蓄品や、自治体からの支援を活用しましょう。
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片付けをする際の注意:
- 家の中が散らかっている場合、片付けを始めると思いますが、ここでも安全が大切です。
- ガラスの破片などで怪我をしないように、厚手の手袋(軍手など)や靴を必ず履いてください。
- ホコリやカビなどを吸い込まないように、マスクを着用しましょう。
- 無理をせず、家族と協力して、少しずつ片付けを進めてください。
家族との協力と情報共有
自宅に戻る過程や、戻った後の片付け、生活再建は、一人で行うのではなく、家族みんなで協力して進めることが大切です。
- 子供には、なぜ慎重に行動する必要があるのか、危険な場所には近づかないことなどを、子供にも理解できる言葉で伝えてください。
- 高齢の家族がいる場合は、体力や体調を考慮し、休憩を取りながら行動しましょう。
- 家族みんなでその日の目標を決めたり、できたことを共有したりすると、前向きな気持ちで取り組めます。
- 困ったことや不安なことがあれば、一人で抱え込まず、家族や地域の支援センター、自治体などに相談してください。
まとめ
災害後、自宅に戻ることは大きな一歩ですが、安全第一に行動することが何よりも大切です。自治体からの正確な情報を確認し、自宅や周辺の安全を十分に確かめてから戻りましょう。
自宅に戻った後も、家の中の安全確認やライフラインの点検を忘れずに行い、二次災害を防ぎましょう。
このページでご紹介した情報を、ぜひ家族みんなで共有し、話し合ってみてください。安全な自宅での生活を一日も早く取り戻せるよう、無理のない範囲で準備と対応を進めましょう。