もしも避難所に行けないとき?家族で考える「在宅避難」の準備
在宅避難とは何か?なぜ考える必要があるのか?
大きな災害が起きたとき、多くの方が避難所へ行くことを考えます。しかし、避難所が遠かったり、満員だったり、ご自身の状況によっては避難所に行くことが難しい場合もあります。また、自宅が無事であれば、住み慣れた家で生活を続けることが最も安心できるかもしれません。
このような場合に備えて、「在宅避難(ざいたくひなん)」という選択肢を知っておくことが大切です。在宅避難とは、災害が発生しても自宅が安全な状態であれば、自宅にとどまり、生活を続けることです。
家族の中には、小さなお子さん、高齢の方、病気や障害がある方など、それぞれ特別なケアが必要な方がいるかもしれません。住み慣れた自宅であれば、これらの家族のケアもしやすく、精神的な負担も少なくなる可能性があります。
もちろん、自宅が安全でない場合は、すぐに避難所や安全な場所に避難する必要があります。しかし、自宅が無事だった場合に備え、「在宅避難」についても家族みんなで話し合い、準備を進めておくことが重要です。
在宅避難のために家族で話し合うべきこと
在宅避難を決めるためには、いくつかの条件を確認し、家族で共通の理解を持つことが必要です。次の点を参考に、家族で話し合ってみましょう。
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自宅の安全性の確認:
- 地震で家が壊れていないか?
- 火事の心配はないか?
- 台風や大雨で浸水(しんすい:水につかること)の危険はないか?
- 自治体が出す「罹災証明書(りさいしょうめいしょ:災害で被害を受けたことを証明する書類)」の判定で、安全と判断されるレベルか?
- 専門家に見てもらう必要があるか?
- 自宅が無事でも、近くで火災や建物の倒壊(とうかい:たおれること)が起きている場合は危険なこともあります。
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家族の健康状態と特別なニーズ:
- 家族に持病(じびょう:以前から持っている病気)やアレルギーがある人はいますか?
- 必要な薬はありますか?
- 小さなお子さんや高齢の家族、障害がある家族など、避難所以外の場所が良い場合がありますか?
- ペットはいますか?ペットも一緒に自宅で過ごせますか?
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必要な備蓄品(びちくひん:準備しておく物)の量と種類:
- 家族の人数と、何日分の備蓄が必要か(最低3日分、できれば1週間分を目標に)。
- 水、食料、トイレ、衛生用品など、何がどのくらい必要か?
- 家族それぞれに必要な特別な物(ミルク、介護用品、ペットフードなど)は?
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情報の入手方法:
- 電気やインターネットが止まったら、どうやって情報を得ますか?(例:電池式のラジオ、スマートフォンの予備バッテリーなど)
- 家族で、信頼できる情報源(自治体のウェブサイトやSNS、テレビ、ラジオなど)を確認しておきましょう。
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家族間の連絡方法:
- もし災害時に家族が離れ離れになった場合、どうやって連絡を取りますか?(例:待ち合わせ場所を決めておく、災害用伝言ダイヤルなど)
- 在宅避難中に、自宅にいる家族と外にいる家族がどうやって連絡を取り合いますか?
在宅避難で特に重要な備蓄品リスト
在宅避難では、外部からの支援が届くまで、自力で生活を維持する必要があります。そのため、十分な備蓄がとても大切です。家族の人数や状況に合わせて、リストを参考に準備しましょう。
- 水: 1人1日3リットルを目安に、最低3日分(できれば7日分)。飲む水と、生活用水(手洗い、トイレなど)を分けて準備できると良いです。
- 食料: 最低3日分(できれば7日分)。加熱せずに食べられるもの(缶詰、レトルト食品、乾パンなど)、栄養バランスの良いもの、家族の好みに合うものを選びましょう。アレルギー対応も重要です。
- 簡易トイレ・トイレットペーパー: 断水(だんすい:水道が使えなくなること)に備えて、凝固剤(ぎょうこざい:水を固める薬剤)付きの簡易トイレがあると便利です。トイレットペーパーは多めに。
- 衛生用品: ウェットティッシュ、消毒液、石鹸、生理用品、おむつ、口腔ケア用品など。体を清潔に保つために重要です。
- 医療品・常備薬: 絆創膏(ばんそうこう)、ガーゼ、包帯、消毒液、痛み止め、胃薬、風邪薬など。家族が普段飲んでいる薬は必ず多めに準備しておきましょう。
- 生活用品:
- カセットコンロとガスボンベ(換気に注意!)
- 懐中電灯、ランタン、予備電池
- 携帯電話の予備バッテリー、モバイルバッテリー
- ラジオ(手回し充電式や電池式)
- ライター、マッチ
- 軍手、ロープ
- 工具セット(簡単な修理に)
- ポリ袋、ゴミ袋
- ラップ、アルミホイル、ペーパータオル(食器洗いを減らせます)
- 毛布、寝袋
- 携帯スリッパ、厚手の靴下(床にガラスの破片などがある場合も)
- 貴重品(現金、身分証明書、保険証など)
自宅での安全確保も忘れずに
在宅避難をするためには、まず自宅が安全でなければなりません。日頃から、次のような対策をしておきましょう。
- 家具の固定:タンスや棚など、倒れると危険な家具は壁に固定します。(※家具固定については、別の記事で詳しく説明しています。「もしもの地震に備える!家族みんなで取り組む自宅の安全対策(家具固定編)」をご覧ください。)
- 窓ガラスの飛散防止:窓ガラスに飛散防止フィルムを貼ると、割れたときに破片が飛び散るのを防げます。
- 避難経路の確保:家具や物が倒れても、部屋の出口や玄関までの通り道がふさがれないように、物の配置を考えておきましょう。
家族への伝え方:子供や高齢者と一緒に考える
在宅避難について、家族みんなで話し合うことはとても大切です。特に、日本語が十分でない家族、子供や高齢者には、分かりやすい言葉で丁寧に伝える必要があります。
- 不安を和らげる: 災害の話は不安になるかもしれませんが、「もしもの時に、家で安全に過ごすための大切な準備だよ」「みんなで協力すれば大丈夫だよ」といった前向きな言葉で伝えましょう。
- 一緒に準備する: 備蓄品を一緒に確認したり、どこに何を置くか一緒に決めたりすることで、当事者意識が高まり、安心して準備を進められます。簡易トイレの使い方などを一緒に練習してみるのも良いでしょう。
- 役割分担: 家族それぞれができること、例えば「〇〇は水の場所を覚える係」「△△はラジオをつける係」のように、簡単な役割分担を決めると、いざという時にスムーズに行動できます。
- 視覚的な工夫: 備蓄品のリストを絵や写真付きで作ったり、家のどこに何があるか地図を書いたりすると、言葉が分からなくても理解しやすくなります。
まとめ:在宅避難も選択肢の一つとして、家族で準備を
災害が起きたとき、避難所に行くことだけが避難の方法ではありません。自宅の安全が確保できる場合は、「在宅避難」も有効な選択肢です。
在宅避難を成功させるためには、日頃からの家族での話し合いと、十分な備蓄、そして自宅の安全対策が欠かせません。家族みんなで協力し、必要な備蓄品を準備し、定期的に見直しましょう。
また、お住まいの地域の自治体(市役所や区役所など)のウェブサイトや発行物を確認し、在宅避難に関する情報や支援制度がないか調べてみることも大切です。地域の情報を知っておくことが、安全な在宅避難につながります。
家族みんなで防災について話し合い、行動することで、もしもの時も落ち着いて対応できるようになります。