もしもの避難時、家族みんなで考える「車中避難」の準備と注意点
はじめに:車中避難とは?
大きな災害が起きたとき、安全な場所に避難することが大切です。多くの場合、学校や公民館などが「避難所」として開かれます。しかし、避難所がいっぱいになったり、体調や特別な事情があって避難所で過ごすことが難しかったりする場合もあります。
そのようなとき、安全な場所にある車の中で一時的に過ごす「車中避難」も、一つの選択肢として考えられます。特に、小さなお子さんや高齢の家族がいる場合、プライベートな空間を保てる車中避難を選ぶ方もいます。
車中避難を選ぶ場合でも、安全に過ごすためには事前の準備と正しい知識が必要です。この情報が、もしものときに家族みんなで安全に過ごすための助けになれば幸いです。
車中避難のメリットとデメリット
車中避難には、良い点(メリット)と難しい点(デメリット)があります。これらをよく理解しておくことが大切です。
メリット(良い点)
- プライベートな空間が保てる: 家族だけで過ごせるため、周りに気を使うことが少なく、落ち着けます。
- ペットと一緒にいやすい: 避難所によってはペットが同伴できない場合がありますが、車の中なら一緒にいられます。
- 持病や体調に合わせやすい: 薬を飲む時間や休息など、家族のペースで過ごしやすい場合があります。
- 荷物の管理がしやすい: 必要なものをすぐに取り出せます。
デメリット(難しい点、注意が必要な点)
- エコノミークラス症候群のリスク: 長時間同じ姿勢で座っていると、足の血管に血のかたまりができやすくなります。これが肺に移動すると命に関わることもあります。
- 体への負担が大きい: 寝る姿勢が難しかったり、十分な休息が取れなかったりして、体が疲れやすくなります。
- 防犯上の不安: 車の中は外から見えやすく、安全を確保する必要があります。
- トイレや食事の問題: 災害時はトイレが使えなくなったり、食べ物や飲み物が手に入りにくくなったりします。
- 温度管理の難しさ: 夏は暑く、冬は寒くなるため、適切な温度管理が難しい場合があります。
- 燃料の問題: エンジンを使いすぎると燃料がなくなってしまい、車の暖房や冷房が使えなくなります。
- 情報収集の難しさ: 最新の災害情報や支援情報を得る手段が限られることがあります。
- 長期化への対応: 車中避難はあくまで一時的な避難方法です。長期になる場合は、他の避難方法を考える必要があります。
車中避難のための準備
もしものときに車中避難を選ぶ可能性を考えて、日頃から準備しておきたいことがあります。
- 車の点検と燃料: いつでも車を使えるように、ガソリンを半分以上入れておく、タイヤの空気圧をチェックするなど、定期的に車の点検をしておきましょう。電気自動車の場合は充電も確認してください。
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車中避難用の持ち物リスト: 家族が車の中で安全に過ごすために必要なものを準備します。非常用持ち出し袋とは別に、車に積んでおくと良いものもあります。
- 体を休めるためのもの:
- 寝袋、毛布、ブランケット
- クッションや枕
- アイマスク、耳栓
- 水分・食料:
- 水(1人1日3リットルが目安)
- すぐに食べられる非常食(パン、お菓子、缶詰など)
- 紙皿、紙コップ、割り箸、スプーン、フォーク
- 衛生用品・トイレ:
- 簡易トイレ(携帯トイレ)
- トイレットペーパー
- ウェットティッシュ、除菌シート
- 生理用品、おむつ
- 歯ブラシ、歯磨きシート
- ゴミ袋(消臭機能付きが便利)
- 明かり・情報収集:
- 懐中電灯、ランタン(電池式または充電式)
- 予備の電池またはモバイルバッテリー
- 携帯ラジオ(手回し充電式があると安心)
- 車のシガーソケットやUSBポートで充電できるケーブル
- その他:
- 着替え、タオル
- 常備薬、絆創膏、消毒液などの救急セット
- ビニールシート(窓の目隠しに)
- 窓ガラスを割るためのハンマー、シートベルトを切るためのカッター(脱出用具)
- 現金(小銭もあると便利)
- 保険証、免許証、母子手帳などのコピー
- 子供のためのおもちゃや絵本
- 高齢の家族が必要なもの(入れ歯ケース、補聴器の予備電池など)
- 体を休めるためのもの:
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停車場所の検討: 事前に、自分の家や職場から近い安全な場所(ハザードマップで危険な場所ではない、高台など)で、一時的に車を停められそうな場所を確認しておきましょう。他の避難者の迷惑にならない場所を選ぶ必要があります。自治体によっては、災害時に車中避難が可能な場所を指定している場合もありますので、自治体の情報を確認してください。
車中避難中の注意点と過ごし方
実際に車中避難をすることになったら、以下の点に注意して安全に過ごしましょう。
- エコノミークラス症候群の予防:
- 定期的に(1〜2時間ごと)車から降りて体を動かしましょう。
- 座ったままでも、足首を回したり、ふくらはぎをマッサージしたりしましょう。
- 水分をしっかり摂りましょう。
- ゆったりとした服装で過ごしましょう。
- 換気をする: エンジンをつけたまま寝ると、排気ガスが車内に入り、一酸化炭素中毒になる危険があります。必ずエンジンを切り、窓を少し開けて換気をしましょう。特に冬場は注意が必要です。
- 防犯に注意する: ドアはロックし、外部から見えないように窓に目隠しをするなどの対策をしましょう。できるだけ一人ではなく、他の車中避難をしている車の近くに停める方が安心できる場合もあります。
- トイレとゴミ処理: 簡易トイレを準備しておき、使用後は適切に処理できる場所を探すか、持ち帰りましょう。ゴミも持ち帰りが原則です。
- 情報収集: ラジオやスマートフォンの災害情報アプリなどを活用し、最新の情報(避難所の状況、支援情報など)を常に確認しましょう。車のバッテリー上がりを防ぐため、エンジンのつけっぱなしには注意し、モバイルバッテリーなどを使いましょう。
- 家族の体調管理: ストレスや疲れで体調を崩しやすいので、家族みんなで声を掛け合い、無理せず休息を取りましょう。特に子供や高齢の家族の様子をよく見てあげてください。
家族で話し合うこと
車中避難は、もしものときの選択肢の一つです。家族みんなで以下のようなことを事前に話し合っておくと、いざという時に落ち着いて行動できます。
- 避難所がいっぱいだったり、特別な事情があったりした場合、車中避難を検討するかどうか。
- 車中避難をする場合の待ち合わせ場所や停車場所の候補。
- 車に積んでおくものリストを確認し、準備しておく。
- 車中避難になった場合の役割分担(運転できる人、子供や高齢者の世話をする人など)。
- 車中避難が長引いた場合の次の選択肢(親戚の家、ホテル、指定避難所など)。
まとめ
車中避難は、避難所の利用が難しい場合の有効な選択肢となり得ます。しかし、知っておくべきリスクや、十分な準備が必要です。この記事で紹介した情報を参考に、家族みんなで「車中避難」について考え、必要な準備を進めておきましょう。
もしものときに、家族みんなが少しでも安全に、そして安心して過ごせるように、日頃からの備えが大切です。