もしもの災害時!高齢者や体の不自由な家族を守るための防災対策
自然災害は、いつ私たちの身に降りかかるか分かりません。特に、ご家族の中に高齢の方や体に不自由がある方がいらっしゃる場合、防災対策はより一層重要になります。移動が難しかったり、特別なケアが必要だったりと、状況に応じた準備と行動が求められるからです。
このサイトは、日本に住む外国人住民の皆さんが、ご家族全員で防災について考え、行動できるようサポートすることを目的としています。この記事では、高齢の方や体に不自由があるご家族がいらっしゃるご家庭で、もしもの災害に備えてどのような準備をし、どのように行動すればよいのか、具体的な対策についてお伝えします。
事前の準備:家族で話し合い、計画を立てましょう
災害が起こってから慌てないためには、日頃からの準備がとても大切です。ご家族みんなで話し合い、具体的な計画を立てておきましょう。
1. 家族の状態を把握する
まず、ご家族の中で高齢の方や体に不自由がある方の状態を正確に把握することが重要です。
- どのようなサポートが必要ですか?
- 一人で歩くのが難しいですか? 車いすや杖を使っていますか?
- 耳が聞こえにくい、目が見えにくいですか? 情報伝達に工夫が必要ですか?
- 持病がありますか? 毎日薬を飲む必要がありますか?
- 認知症などがあり、状況判断や指示の理解が難しいですか?
- 人工呼吸器や在宅酸素などの医療器具を使っていますか? 電源やバッテリーの確保は必要ですか?
- パニックになりやすいなど、精神的なケアが必要な状況はありますか?
これらの点を具体的に確認し、書き出しておくと良いでしょう。
2. 避難計画を具体的に立てる
ご家族の状態に合わせて、避難計画を立てます。
- どこに避難しますか?
- 地域の指定避難所はどこですか? 高齢の方や体の不自由な方が安心して過ごせる「福祉避難所」が設置される場所もあります。事前に自治体に確認しておきましょう。
- 安全な親戚や知人の家も避難先の選択肢になりますか?
- どのように避難場所へ移動しますか?
- 徒歩での移動は可能ですか? 介助する人は何人必要ですか?
- 車いすでの移動の場合、安全なルートはどこですか? 段差や坂道はありますか?
- 公共交通機関が止まっている場合、どうしますか?
- もし自宅にとどまる場合は、安全な場所(例:家具が倒れてこない、窓から離れている場所)を決めておきます。
- 避難するタイミングは?
- 早めに避難を開始する必要があるかもしれません。自治体からの避難情報(高齢者等避難など)に特に注意しましょう。
- 誰が誰を介助しますか?
- 家族の中で役割分担を決めておきます。体力のある人が移動をサポートする、情報伝達役になるなどです。
(図解を想定:避難計画の書き込み例、避難ルート図など)
3. 必要なものを準備する
一般的な非常持ち出し品や備蓄に加えて、高齢の方や体に不自由がある方に特化した準備が必要です。
- 非常持ち出し袋に入れるもの(すぐに持って逃げるもの)
- 常備薬: 少なくとも3日分(できれば1週間分)
- お薬手帳や処方箋の控え: 薬の名前や量、かかりつけ医の情報が分かります。
- 医療器具: 人工呼吸器の予備バッテリー、インスリン、カテーテル、ガーゼなど、普段使っているもの。
- かかりつけ医、ケアマネージャー、訪問看護ステーションなどの連絡先
- 健康保険証、診察券のコピー
- おむつ、介護用品
- 特別な食料: 飲み込みやすいもの、アレルギー対応のものなど、本人が食べ慣れているもの。
- 補聴器の予備電池、眼鏡
- 持病や必要なケアについて書いたメモ: 意識がない場合でも、周りの人がサポートできるように。やさしい日本語や英語など、複数の言語で書いておくと役立つ場合があります。
- お気に入りのもの: 落ち着くためのブランケットやぬいぐるみなど、本人が安心できるもの。
- 自宅に備蓄しておくもの(数日間、家で過ごすために)
- 水、食料(上記非常持ち出し袋のものに加えて多めに)
- カセットコンロやガスボンベ
- 簡易トイレ、衛生用品
- 予備の薬、医療器具、介護用品
(チェックリストを想定:高齢者・体の不自由な家族のための持ち出し品・備蓄リスト)
4. 自宅の安全対策を見直す
高齢の方や体の不自由な方が安全に過ごせるよう、自宅の環境を確認・整備します。
- 家具の固定: 転倒や落下を防ぐため、タンスや棚、テレビなどを固定します。
- 避難経路の確保: 部屋から玄関までの通路に物を置かないようにします。夜間でも安全に歩けるよう、誘導灯や懐中電灯を枕元に置いておきましょう。
- 寝室の安全: 就寝中に地震が起きても安全な場所(窓から離れた場所、丈夫な家具のそばなど)を決めます。
5. 地域の情報を集める
お住まいの自治体や地域の情報を確認しましょう。
- 福祉避難所: どこに設置されるか、利用するための条件や手続きは必要か。
- 災害時要援護者名簿: 災害時に自治体からの支援を受けやすくするための名簿です。登録制度があるか確認し、該当する場合は登録を検討しましょう。
- 地域の支援: 近所の人やボランティアなど、地域でどのような支援が受けられる可能性がありますか。
6. 家族内での情報共有と訓練
準備した計画や持ち物リストは、家族みんなで共有し、理解しておきましょう。定期的に「もしも」の状況を想定して、どのように行動するか話し合ったり、実際に動いてみる練習(避難訓練)をしたりすると、いざという時に落ち着いて行動できます。子供にも、おじいさんやおばあさんを助けるために何ができるか、一緒に考えてもらいましょう。
災害発生時の行動:落ち着いて、安全を確保しましょう
実際に災害が発生した場合の行動です。
1. まずは身の安全を守る
地震の揺れや台風の強風など、災害が発生したら、まずはご自身とご家族の身の安全を最優先で確保します。テーブルの下に隠れる、頭を守るなど、基本的な安全行動をとります。移動が難しい場合は、無理に動かず、安全な場所で揺れがおさまるのを待ちます。
2. 避難の判断と行動
自宅が安全で、ライフライン(電気、ガス、水道)も大丈夫な場合は、自宅にとどまることも選択肢の一つです。しかし、家が壊れる危険がある、津波や洪水で浸水する可能性があるなど、危険が迫っている場合は、安全な場所に避難しなければなりません。
避難が必要な場合は、事前に計画したルートで避難場所へ向かいます。高齢の方や体に不自由がある方のペースに合わせ、無理せず移動しましょう。介助が必要な場合は、複数人でサポートします。声をかけあい、励ましあいながら行動することが大切です。
3. 避難場所での過ごし方(福祉避難所)
地域の指定避難所は多くの人が集まるため、高齢の方や体の不自由な方にとっては負担が大きい場合があります。「福祉避難所」は、一般の避難所での生活が困難な方(高齢者、障がい者、妊産婦、乳幼児など)を受け入れるために開設される避難所です。プライバシーへの配慮や専門的なケアの提供が期待できます。ただし、開設されるまでに時間がかかる場合や、受け入れられる人数に限りがあるため、誰でもすぐに入れるわけではありません。一般の避難所に一時的に避難してから、福祉避難所へ移動することも考えておきましょう。
避難所では、周りの人との協力も大切です。困ったことがあれば、遠慮なく支援を求めてください。ご家族の状態を伝えるメモや連絡先は、すぐに取り出せるようにしておきましょう。
家族で支え合うことの大切さ
防災対策は、一人だけで行うものではありません。特に、高齢の方や体に不自由があるご家族がいらっしゃる場合、家族みんなで支え合い、協力することが最も重要です。日頃からコミュニケーションを密にし、お互いを気遣う気持ちを持つことが、もしもの時に大きな力になります。
まとめ
高齢の方や体に不自由があるご家族がいるご家庭の防災対策は、事前の丁寧な準備と具体的な計画が鍵となります。ご家族の状態を把握し、避難計画を立て、特別な配慮が必要な持ち物を準備する。そして、これらの情報を家族みんなで共有し、話し合い、定期的に見直すことが大切です。
もしもの時に、ご家族全員が安心して安全な場所へ避難し、落ち着いて過ごせるよう、今日からできることから始めてみましょう。地域の情報や自治体の支援制度についても確認し、活用してください。
この情報が、皆さんのご家庭の安全な暮らしに役立つことを願っています。