もしもの災害時、家族みんなで防ぐ!感染症対策の基本
災害時に気をつけたい感染症
地震、台風、大雨などの災害が起こった後、自宅での生活が難しくなり、避難所などでたくさんの人が一緒に過ごすことがあります。また、自宅が無事でも、水道や電気が止まってしまうなど、いつもの生活ができなくなることもあります。
このような環境では、衛生状態が悪くなったり、人と人との距離が近くなったりすることで、風邪やインフルエンザ、お腹の病気など、さまざまな感染症が広がりやすくなります。
特に、小さなお子さんや高齢者、持病のあるご家族は、感染症にかかりやすく、重症化するリスクもあります。家族みんなの健康と安全を守るためには、災害時こそ、感染症対策に普段以上に気を配ることがとても大切です。
このページでは、もしもの災害時に家族みんなでできる感染症対策の基本的な方法と、それぞれの状況に応じた注意点についてご説明します。
感染症対策の3つの基本
感染症を防ぐために、家族みんなで覚えておきたい大切な基本が3つあります。これは災害時だけでなく、普段から心がけることで、病気にかかりにくくなります。
1. 手洗いと消毒
感染症の多くは、手についたウイルスや細菌が口や鼻から体に入り込むことで起こります。石鹸と水が使える場合は、しっかりと時間をかけて手洗いをしましょう。指の間や爪の間も丁寧に洗うことがポイントです。
水が使えない場合は、アルコール消毒液を使います。携帯用の消毒液を準備しておくと、いつでもどこでも手指をきれいにできます。
ご家族で、食事の前やトイレの後、外出から帰った後など、どのような時に手洗い・消毒をするか確認し合いましょう。小さなお子さんには、歌を歌いながらなど、楽しみながら手洗いの練習をさせるのも良い方法です。
2. 咳エチケットとマスク
咳やくしゃみをした時に、ウイルスや細菌が空気中に飛び散り、他の人にうつしてしまうことがあります。これを防ぐために「咳エチケット」を守りましょう。
- 咳やくしゃみをする時は、ティッシュやハンカチ、なければ袖の内側で口と鼻を覆います。
- 使ったティッシュはすぐにゴミ箱に捨てます。
- 咳やくしゃみをした後は、すぐに手洗いをします。
可能であれば、マスクを着用しましょう。マスクは、自分が他の人にうつさないため、そして、他の人からうつされないための助けになります。災害時に備えて、家族の人数分のマスクを多めに備蓄しておきましょう。
3. 換気と清潔な環境
人が集まる場所や、閉め切った空間では、空気が汚れて感染症が広がりやすくなります。定期的に窓を開けるなどして、空気を入れ替え(換気)ましょう。寒い時期でも、数分間窓を開けるだけでも効果があります。
また、みんなが触る場所(ドアノブ、テーブルなど)をこまめに拭くことも大切です。ウェットティッシュやアルコール消毒液などがあると便利です。
避難所での感染症対策
避難所では、たくさんの人が限られたスペースで共同生活を送るため、普段以上に感染症対策が必要です。
- パーテーションや布で空間を区切る: 可能であれば、家族ごとにスペースを区切り、他の人との距離を保ちましょう。
- 定期的な換気: 避難所の管理者と協力し、こまめに窓を開けるなどして換気を行います。
- 共有物の消毒: トイレや洗面所など、みんなが使う場所は特に清潔に保つ努力が必要です。備え付けの消毒液があれば活用し、なければ自分たちで持参した消毒液でできる範囲をきれいにしましょう。
- 体調管理: 毎日体温を測るなど、家族の体調をよく観察しましょう。体調が悪い場合は、すぐに避難所の管理者や医療班に相談し、指示に従ってください。必要であれば、別の場所で過ごすなど、感染を広げないための配慮が必要です。
- 食中毒の予防: 炊き出しや配給された食事は、早めに食べましょう。衛生的に調理されているか、保管状況はどうかなども気にかけ、少しでもおかしいと感じたら食べるのをやめましょう。
在宅避難での感染症対策
自宅で安全に過ごせる場合でも、水道や電気が止まるなど、普段通りの生活が難しいことがあります。
- 水がない場合の衛生対策: 手洗いが難しい場合は、アルコール消毒液を頻繁に使いましょう。食器は使い捨てのものを使ったり、汚れを拭き取ってから少ない水で洗ったりするなど工夫が必要です。簡易トイレを使う場合も、処理を衛生的に行い、使用後は必ず手洗い・消毒を徹底します。(災害時のトイレ対策については、別の記事で詳しくご説明します。)
- ゴミ処理: ゴミはしっかり袋に入れて密閉し、決められた場所に集積するなど、衛生的に管理しましょう。ゴミの放置は感染症の原因になります。
- 換気: 自宅でも定期的な換気を行い、空気をきれいに保ちましょう。
- 備蓄品の管理: 備蓄している食料や水の賞味期限・消費期限を確認し、衛生的に保管されているかチェックしましょう。
家族みんなで備えておきたいもの
災害時の感染症対策のために、非常用持ち出し袋や非常備蓄品の中に加えておくと良いものをいくつかご紹介します。
- マスク: 家族の人数分 × 数日分以上
- アルコール消毒液: 携帯用と据え置き用
- 液体石鹸: 少量の水でも泡立ちやすいもの
- ウェットティッシュ: 手指用と、体を拭くための大判のもの
- 体温計
- 使い捨て手袋
- 使い捨ての食器や割り箸
- ゴミ袋
- 常備薬や、かかりつけ医からの処方薬
これらのリストは、あくまで一例です。ご家族の状況に合わせて、必要なものを準備してください。(非常用持ち出し袋や非常備蓄品については、別の記事でも詳しくご説明しています。ぜひ参考にしてください。)
(図解:基本的な手洗いのステップ、咳エチケットの方法などを入れると分かりやすいでしょう。)
体調が悪くなったときは?
もしもご家族の誰かが災害時に体調を崩してしまったら、まずは落ち着いて、体温を測るなど容体をよく確認しましょう。
- 他のご家族にうつさないように、できる限り部屋を分けて休ませます(隔離)。
- 看病する人は、マスクを着用し、手洗いや消毒をこまめに行います。
- 水分をしっかりとらせ、温かくして休みましょう。
- 災害時でも、地域の医療機関が可能な範囲で対応していることがあります。また、避難所には医療支援チームが来ている場合もあります。自分で判断せず、自治体の情報や避難所の管理者などに相談し、指示を仰ぐことが大切です。
まとめ
もしもの災害時、家族みんなで力を合わせて困難を乗り越えるためには、心と体の健康を守ることが最も大切です。感染症対策は、そのための重要な一歩です。
普段から家族で「手洗いってどうするんだっけ?」「咳が出たらどうする?」などと話し合っておくと、いざという時にも落ち着いて行動できます。小さなお子さんには、なぜ感染症対策が必要なのかを優しく伝え、一緒に楽しみながら習慣にしていくと良いでしょう。
ご自身だけでなく、日本語での情報収集が難しいご家族(子供や高齢者など)にも、イラストや簡単な言葉で伝える工夫をすることも大切です。このサイトで提供している多言語での情報もぜひご活用ください。
災害はいつ起こるか分かりません。日頃から家族みんなで感染症対策を意識し、必要なものを準備しておくことが、もしもの時にご家族の健康と命を守ることにつながります。